2009.01.17
消費税について、ブログに書かせていただいたところ、数多くのコメントをいただきました。私の説明が舌足らずで、いくつか誤解を生じてしまったようなので、少し長めで恐縮ですが・・・。
<消費税引き上げは必要か?>
GDPの150%を超える800兆円の借金、毎年30兆円を超える新規借金をしなければ予算編成できない状況を前提にすると、何らかの形で負担の引き上げは必要と思われます。
その際、所得税や法人税で負担を引上げるという方向ももちろんあります。ただ、例えば、平成20年度予算で税収が7兆円近く下振れしているように、所得税や法人税などの直接税は、景気に大きく左右されます。また、少子高齢社会を迎えて、働き手が減少している状況では、所得税・法人税に頼る構造は必ずしも好ましくありません。また、今後の日本に求められるのは、増大する社会保障の安定的な財源です。
この点、消費税は、景気動向に強く安定的で、働き手のみならず全ての国民に一定の負担をお願いできる点で、優れています。また、消費税分を全て社会保障支出に回すことで、全て国民の皆様にお返しすることもできます。
将来世代につけ回しをしないためにも、消費税を中心に国民の皆様にご負担をお願いすることは不可欠であり、政治がこの点から逃げることは許されません。
<消費税の逆進性の問題をどうするか>
ただし、消費税には逆進性があるのは事実です。したがって、今後、消費税を引上げる際には、私が長く生活した英国など諸外国と同様に、食品や医療といった生活必需品は非課税ないしは税率引き下げを行う必要があります。
<消費税引き上げ時期と景気との関係>
また、消費税引き上げの条件の一つは、景気が回復していることです。竹下総理が1989年に消費税導入を成し遂げたときは正にバブルの絶頂期でした。逆に、橋本総理が1997年に5%へ引上げた際は、足元の金融不安と景気不安の時期で、結果として、日本経済を厳しい状況に追い込んでしまいました。今回も景気回復が十分確認されなければ、少なくとも消費税の引き上げは、かえって日本経済を破壊し、財政再建を遅らせてしまいます。
とりわけ、現在は、世界中で金利引き下げ、減税措置などの景気刺激のための政策を総動員しているときです。そのときに、消費税引き上げの議論をすること自体が大きな問題です。
<2011年度と法律で決めることについて>
政府は、「景気回復を前提に2011年度から税制改正を実施する」ということを昨年末既に閣議決定しており、今回、更に同じ内容を法律で規定しようとしています。「景気回復が条件だから、いいじゃないか」という立場です。
しかし、かつての苦い経験を思い出す必要があります。1997年に橋本総理の下で「財政構造改革法」という法律が作られ、今後3年~5年の各歳出項目(公共事業や防衛関係費や教育関係予算)についての削減目標が法律で厳格に決められました。ところが、法の制定とほぼ同時に、金融不安、景気不安が顕在化したわけですが、法律で当面の財政・経済運営が決められてしまっているがために、政府が機動的・弾力的に政策発動ができず、結果として傷を広げてしまいました。
法律で決めるということは、閣議決定と異なり、複数年度にわたって、政府のみならず衆議院・参議院の意思も固定してしまうということです。
経済は生き物ですから、経済政策も財政政策も機動性が重要です。だからこそ、日銀の金利政策は政府・国会から独立していますし、予算も法律とは異なり、単年度の法型式とされているわけです。
私は、閣議決定はともかくとして、法律で実施の年度を書くことに異議があるとの立場です。
<無駄遣いとの関係>
消費税を含む税制抜本改正のもう一つの要件は、無駄遣い撲滅です。国民の皆様の間に、税金の無駄遣いについて強い疑念があります。
民主党が言うように、「国の一般会計・特別会計を併せた歳出210兆円の1割ぐらいは無駄遣いだろうから、20兆円は無駄遣いでカットできる」などというのは完全な暴論です。
何故なら、210兆円のうち180兆円近くは、イ)過去の借金返済、ロ)年金・医療・介護の社会保障支出、そしてハ)地方への支出(殆どが教育・社会保障関連)で、削減できないものばかりだからです。1割無駄があるとしても、分母は210兆円ではなく30兆円です。
それでも、国民の皆様が怒っているのは、国会議員や公務員が襟を正さないことについてだと思います。定数削減や給与カットはどうしても必要になります。
少なくともこの道筋、行程表を持たずして、税制抜本改正だけが先行するのは、理に合わないといえます。
<私の結論>
無駄を排除すれば、20兆円・30兆円といくらでもお金が出てきて、「年金も全額税金化、高校も義務教育化、子供手当ても倍増、農業者に個別所得保障、高速道路も無料化」といくらでもいい夢が見られるなどという、お伽話は言語道断です。
したがって、現在の財政状況を踏まえると、消費税を中心に負担の引き上げは不可避です。ただし、その第一の前提は景気の回復であり、「3年間で回復させる」という政策目標はいいとして、その目標を前提に、法律で引き上げの実施時期を明記することは、経済・財政政策の機動的運営に大きな弊害を及ぼすので、避けるべきです。
また、私が事務局を勤めた「税金の無駄遣い撲滅PT」の作業もあって、来年度予算で5000億円近い税金の無駄遣い撲滅が達成できたように、無駄撲滅の作業を今後も続けていかなければなりませんし、とりわけ、議員定数削減や公務員給与引き下げ、天下り根絶などの襟を正す作業は絶対に必要です。
過去のブログ
木原誠二について
木原 誠二
衆議院議員・自由民主党 第20区支部長
自民党選挙対策委員長
5つの基本政策