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2009.01.25

人事院が牙を剥く

 「人事院との交渉不調」、公務員制度改革を巡って、こんな見出しが昨日の新聞には並びました。

 おかしな話です。人事院は、国家公務員法で規定された内閣の所轄機関です。もちろん、合議制の独立行政委員会として、内閣から独立した権限行使は認められていますが、会計検査院のような憲法上の機関でもありません。その内閣の機関が、内閣の方針に明確に反旗をひるがえす

 渡辺元行政改革大臣や塩崎元官房長官が心血注いで推進した「公務員制度改革」。その一つの柱が、人事の内閣一元化です。幹部人事は、省庁縦割りではなく、内閣人事局に一元化する。更に、職員の任用、研修、試験に関する企画立案も内閣人事局において、内閣の明確な指示のもとに行う。

 したがって、人事院の多くの機能は、内閣人事局に移管されることは、既に決定済みのことです。

 残る機能はといえば、公務員に労働基本権が認められていないなかで、公務員の労働環境を確保するために不可欠なもの。つまり、勤務時間や休業に関する規則制定や、民間給与の実態を踏まえた公務員の給与にかかる人事院勧告の権限、懲戒処分などに対する不服申し立ての審査権限、など、労働者としての基本的権限を確保するものに限られてくるはずです。

 ところが、人事院は、「公務の中立性・公平性が確保できない」などと、難色を示したというのです。

 

 「やっぱりそうくるんだな」という思いです。公務の中立性・公平性というのは、官僚機構が必ず使う常套文句です。そりゃ、公務は中立で公平でなければなりません。では、米国で政権交代がおこって官僚が一新されるのは、中立的・公平でないということになるでしょうか。そうではないはずです。

 

 私は、「英国大蔵省から見た日本」(文春新書)を出版した際、先ず最初に、日本の政官関係の最大の問題は、「公務員は国民全体の奉仕者」という文言であると指摘しました。「何を言っているんだ」と批判もいただきました。でも、その思いは今でも変わりません。

 官僚組織は、この文言をたてに、「国民全体の利益を考えられるのは官僚組織だ、役所だ。政治は短期的で部分的利益しか考えられない」と言ってはばかりませんし、「必要な場合には政治の指示に反することも、時としては国益にかなう」と主張します。

 ところが、私が2年間働いた英国大蔵省の経験でいうと、公務員は、時の政権のために全力を尽くすことが使命とされています。だからこそ、政権与党の議員以外の議員との接触は厳格に禁止されているわけです。

 どうしてこういうことになるかというと、公務員の使命は、「国民の民意によって選択された時の政権に忠実に尽くすこと」とされているからです。民主主義、民意が絶対なのです。

 公務員は民意によって選ばれていません。一部の官僚の思いよりも民意が優先されなければなりません。公務員制度改革は、その一環でもあります。

 人事院が「公務の公平・中立」をたてに牙を剥いたわけですが、全く理にかなっていませんし、民主主義を理解しているとは思えません。

 ちなみに、人事院総裁は、これまで9代にわたり一環して官僚OBが締めています。「公平・中立」であるわけがありません。官僚による官僚のための組織でしかないのです。

 ここは、ぶれることなくしっかりと取り組んでいかなければなりません。

 

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