日中首脳会談が、民主党政権末期から途絶えて以来、2年半ぶりに実現しました。
日本と中国は、世界第3位と第2位 の経済大国であり、隣国として、ともにアジアと世界の平和と安定に重要な責任を担っています。その二国の首脳が会談すらできない状態は、極めて異常であ り、私もアジア担当の外務大臣政務官として、在任中は、日中首脳会談の実現に向けた地ならしのために汗をかいてきましたので、感慨もひとしおです。
今回の会談にあたっては、事前に4項目にわたる合意文書が交わされました。両国の外交当局者らが知恵を絞って、未来志向の“大人な対応”をしたことによります。
大切なのは、この歩みを本物にすることです。そのためには、4つの方向性が重要です。
第一に、実務的な対話メカニズムの再開です。具体的には、経済閣僚による「ハイレベル経済対話」や外務省次官級の戦略対話など。
第二に、偶発的な軍事衝突などを回避する危機管理メカニズムの構築です。具体的には「海上連絡メカニズム」の、早期の運用開始です。
第三に、日中両国がwin-winの関係になれる事柄での協力体制の確立です。例えば、環境問題(PM2・5など)やエネルギー問題(LNG共同購入やパイプライン網整備など)などで、協力事業を立ち上げること。
第四に、人的交流の促進、とりわけ若手の往来促進です。
こうした4つの方向性に基づいた努力を積み重ねた上で、日本としての最大の役割は、「中国を国際社会のルールの中に取り込んでいくこと」です。中国の行動 は、東シナ海や南シナ海での威圧的な行動や、近隣諸国にまで影響を及ぼす深刻化する公害に代表されるように、国際社会のルールや常識を逸脱するケースが増 えています。現在のサンゴ密漁もその一つです。
中国が国際社会のルールにのっとって平和に成長していくことは、日本の平和と繁栄にとっても大切なことですので、知恵を絞って、したたかに対応する必要があります。
いずれにしても、日中関係は我が国にとって最も重要な二国間関係の一つであり、今回の首脳会談実現を契機に、戦後70周年の節目を迎える来年に向けて、私たちの子どもや孫の世代まで続く、未来志向の安定した関係を構築していきたいと思います。
————————————
【追記:2014/11/20】
日中首脳会談実現に多くの貴重なご意見をいただき、ありがとうございました。
中国と軋轢がある多くの国々が、日本の首脳クラスとの会談などで海洋の安全や法の支配などで協調をう約束します。ところがその数日後には、中国首脳との間でも同様の協調を約束する。
アメリカと我が国が明確に反対して説得をしても、数ヵ国を除いてほとんどの国は中国主導のインフラ銀行に出資・参加する。
好き嫌いは別にして、中国がもはや国際社会で無視しえない存在になった、現実です。
だからこそ、我々はしたたかに中国を国際社会のルールに取り込んでいく外交を行う。
ちなみに、アジアの国が一番望んでいないのは、日本と中国が喧嘩して、「どっちの側につくか選べ」と迫られること。今年面会したシンガポールのリシェンロン首相の言葉です。
私は重い言葉だと思います。
ちなみに、机の上で笑顔で会話しながら机の下で足で互いに蹴り会う、それも外交的には「友好」です。
いずれにしても、我々には、アジアの秩序を中国流に染まらせない責任があり、だからこそ、強くなる責任があると・・・
貴重なご意見の数々、ありがとうございました。