自由民主党・衆議院議員
木原誠二

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2018.05.24

財政再建特命委員会提言書 ~財政の自由度を取り戻すために~

財政再建特命委員会提言書 ~財政の自由度を取り戻すために~

役員として提言書の作成、関係者への説明等でこの2か月飛び回ってきた財政再建特命委員会の提言書が本日の総務会で了承され、党決定となりました。今後官邸に申し入れをし、政府の骨太の方針等に反映していきたいと思います。

 


画像をクリックすると財政再建に関する特命報告書をご覧いただけます
財政再建に関する特命報告書

 

 

今回の提言書で、意をくだいたことは、以下のとおりです。

 

第一に、財政再建が必要な理由をしっかりと明示すること。

これまでは、財政再建というと、「財政は破綻する」、「いや、日本は経常黒字国、資産もたくさんあり、貯金もたくさんあるから破綻しない」、という水かけ論に陥ってきました。実際、「破綻する破綻する」と言われながら、この20年破綻することなく続いてきたのも真実です。

したがって、破綻回避はもちろん中長期的に大切ですが、短期的には、硬直化した財政を健全化して財政の対応力を回復する必要性に力点を置いています。破綻するしないにかかわらず、借金の返済はしなければなりません(借金を返済しなければその瞬間にデフォルト、破綻となります)。その結果、我が国は、国の歳出のかなりの部分が過去の借金返済に回ってしまっています。このことは何を意味するのか、他国(例えば中国や韓国)が未来に向けた次世代インフラ投資、技術開発投資を加速しているときにお金がなくできない、万が一世界的な恐慌や大災害が襲ってきたときでも財政に対応余力がない・・・、政策の選択肢が極端に狭まってしまっているのです。もちろん、今は低金利ですからまだいいですが、これが1%でも金利が上がれば(それでも、低金利ですが)、財政の余力は更に大幅に失われてします。

しかも、今後数十年かけて支え手である勤労世代は約3割、3000万人強も減少するのです。負担とともに硬直化した財政を引き渡すのは明らかに不適切です。

大切なことは、財政の対応力、自由度を引き上げることです。

 

第二は、財政再建と経済再生の両立を図ること。安倍政権になっての5年間は、実は、財政再建と経済再生が両立してきた稀にみる期間です。これを継続させること。その際、一部には、財政出動して更に経済成長を目指すべきという意見もありますが、現実には、日本の需給ギャップは極端な需要不足状態にはなく、大掛かりな財政出動を必要とする状況にはありません。しかも、財政を用いた景気対策の効果は低下してきています。むしろ、今は、内部留保とりわけ現預金が積みあがっている企業部門の投資を引き出すことが不可欠です。同時に、国民に対し、財政・社会保障の持続可能性と経済成長の道筋を示すことで、安心感をもっていただき、消費を喚起することが大切です。

 

第三に、機械的な歳出削減は意味がないということ。数字ありきの機械的な歳出カットは、歳出構造の変革に逆効果ともなり得ます。例えば、社会保障ですが、今後の高齢化とりわけ団塊世代の皆さんが順次75歳以上となられる状況を考えた場合、社会保障費が増えることは避けられません、むしろ社会保障費の増加は所与の前提といっていいと思います。ここに機械的な一律のキャップをかけることは弊害こそあれ、効果はありません。むしろ、年齢でなく能力に応じたご負担を求めるとか、保険の範囲の適正化を進めるであるとか、費用対効果の分析をしっかり行うとか、働くことが不利益にならない社会保障制度を構築するであるとか、明確な理念を掲げた上で、一つ一つの改革項目を地道に積み上げることが大切です。

 

第四は、給付と負担のバランスについて、明確に意識して考慮すること。日本の公的部門の状況を諸外国と比較すると、社会保障支出はOECD比較では中程度になっていますが、国民負担率は最下位となっています。分かりやすくいえば、「中福祉・低負担」の状況です。このアンバランスの解消が不可欠です。ただし、アメリカのように低福祉が幸せかといえば、そうとは思えません。その意味で、中長期的に低負担の状況の是正にどのように取り組んでいくか、国民のご理解をいただきながら、知恵を出していかなければなりません。

 

最後に、財政再建と言いますが、実際には財政出動をバッサリと減らしているわけではありません。財政再建というと「緊縮財政で経済を殺すのか」というお叱りを受けることがありますが、現実には、国は毎年100兆円あまりの予算を組んでいるのです。これを緊縮財政というのか否か、私にはそうとは思えません。

 

緩やかな経済成長が持続し、金利が低位に抑えられている今、団塊の世代が皆さんが75歳に達する前の今、このよい機会を逃すことなく財政再建と経済成長の両立を図るべく、更に努力していきたいと思います。