2020.01.17
今週火曜日から党・経済成長戦略本部(岸田文雄本部長)として、デンマーク、スェーデンへ出張にきています。目的は、経済・金融のデジタル化・キャッシュレス化が著しく進む北欧諸国の実情を自分の目で見てくること。1月29日の経済成長戦略本部に全体の出張報告をする予定ですが、、、今日は、昨晩のステファン・イングベス・スェーデン中央銀行総裁との刺激的な議論について、簡単に報告しておきたいと思います。
テーマはe-クローネ(クローネはスェーデンの通貨)、つまり中央銀行が発行するデジタル通貨についてです。
私のような保守的人間は、デジタル通貨、つまり日本銀行が円をデジタルな形で発行するなんて途方もない夢に感じられます。
何故なら、中央銀行がデジタル通貨発行したら、①交通系やIT系の電子マネーはいらなくなるだろうな、②国民は市中の民間銀行に口座を開いて預金通貨を持つのではなくて、より安全な中央銀行に直接口座を開くのだろうな、③そうなったら、現在、市中銀行を通じて行われている信用創造機能は誰が果たすのだろうか、④有事には今でも市中銀行の預金から現金への逃避が起こるけれど、これが有事でない平時でも常に起こって、市中銀行は毎日取り付け騒ぎになるんだろうな、そんなことばかりをつらつら考えてしまうからです。
ところが、イングベス総裁の議論はいたってシンプル。
これは理屈や理論の問題ではなくて哲学・歴史の問題だ。貝殻や石材から始まって、銅、銀、金、紙幣・・・、通貨は常に変化してきた。現在の円やクローネも多くの民間銀行がそれぞれ発行していた通貨のうち最も利便性の高いものが生き残って中央銀行紙幣となった。技術が進んで、物理的な紙幣ではなくデジタルな通貨ができて、そちらの方が便利であれば、そちらが選ばれるだけだ。
私の理解が間違っていなければ、こういうことだと理解しました。
そして、私のような素人が抱く上記のような数々の懸念に対しては、金融のシステムは大きくは変わらないよと。中央銀行による通貨発行と市中銀行による預金受け入れ、信用創造のメカニズムはデジタル通貨になっても変わらないのだと。
ここは、本当にそうなのだろうかと、昨晩の2時間余りの議論では詰め切れず・・・。ただ、スェーデンを見ていると、確かに、キャッシュレス決済比率が8割を越えて現金需要がどんどん減っている中でも、銀行の基本的役割は揺らいでいないようです。問題は、これが8割から9割、99%とキャッシュレスがどんどん進んで、いよいよ100%になったときもやはり金融仲介機能には影響がないのか、単なる量的違いなのか、そうではなくて、そこに質的、本質的違いがあるのか、、、。
物理的な現金が残っている世界では、急激かつ過度な動きに対して一定の歯止めがかかるけれども、完全にデジタル化された世界ではネットワーク効果もあって、急激な動きを止めることはできず金融のボラティリティーは制御できないくらい大きくなってしまうのではないか、100%のキャッシュレスは質的に大きな飛躍であるように個人的には思います。
しかし、はっきり言えるなと思ったことは、昨年Facebookがリブラを発行しようとした、これに対しては各国の規制当局が待ったをかけたけれども、仮に、それ相応の経済規模の国が自らの国家主権に基づいてデジタル通貨を先行発行したら、その国の通貨との競争条件を平準化するためには、他の国々もデジタル通貨を検討せざるを得なくなるということ。でなければ、自国通貨が選択されなくなってしまう。その可能性は排除できないなと。
想像力を豊かにして勉強だけはしておかなければならない、そう感じさせていただいた実に刺激的な2時間でありました。
イングベス総裁、ありがとうございました。
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木原誠二について
木原 誠二
衆議院議員・自由民主党 第20区支部長
自民党選挙対策委員長
5つの基本政策