自由民主党・衆議院議員
木原誠二

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2016.05.16

若者を基軸とした経済対策 提言(若者を基軸とした経済対策勉強会)

 私が座長を務める「若者を基軸とした経済対策勉強会」で提言を取りまとめ、加藤大臣・石原大臣・稲田政調会長に申し入れを行いました。志ある若者をしっかりと支えていきたいと思います。
「若者を基軸とした経済対策勉強会」で提言を取りまとめ、加藤大臣・石原大臣・稲田政調会長に申し入れを行いました。

若者経済対策(概要紙)

以下、提言の内容です。


 

若者を基軸とした経済対策 提言

平成28年4月27日

若者を基軸とした経済対策勉強会

本勉強会は、一億総活躍社会の中心を担う若者の溢れる情熱や志を日本の経済社会発展につなげることを目指し、永田町・霞が関の通常の政策決定過程では出てこない新たな視点の提案をするため、若手議員(座長:木原誠二衆議院議員)を中心に設立された。

本勉強会では、3月16日以降、有識者ヒアリングやメンバー間の討議など精力的に6回の会合を重ね、以下の通り提言を取りまとめたので報告する。


1.社会的起業家支援

(1)プラットフォーム「チャレンジ・ジャパン」の立上げ

  • 若者の中で、社会的起業あるいは公益的起業に関心を持つ者が少なくないが、アイディア、志は十分であるにもかかわらず起業にあたっての資金面やノウハウがハードルとなって、足を踏み出せない場合が多い。そうした課題を乗り越えるための仕組みを以下のとおり導入する。
  • ①社会的企業を目指す若者からの事業・企画提案を受け付け、②資金の出し手(企業、個人)、③起業ノウハウを持つサポート人材とのマッチングを提供する場を官民で立上げる。(民間の寄付金やノウハウを活用)
  • 政府は、十分な広報予算を確保した上で、同プラットフォームのブランド化や情報発信に注力。また、大臣はじめ役所の幹部また政治家は企業訪問を通じた寄付金集めを実施する。
  • なお、同プラットフォームは、あくまで「志ある若者の自発的な取組」を側面からサポートすることを目的とし、参加するための要件や活動内容等を過度に縛ることがないように留意する。

(注)社会的起業家経験のあるメンバーから、志ある若者には、彼らを利用しようと近づいてくる年配者も少なくなく、若者に「悪い虫」がつかないようにすることも大切との意見があった。

(2)クレジットカードや電子マネーのポイントの有効活用

  • 社会的起業家を育成するためには、これまで眠っていたお金を「志のあるお金」として、有効活用できるしかけが不可欠。そうした観点から、個人が貯めているクレジットカードや電子マネーのポイントを、社会的起業家に還元できる仕組みを構築する。
  • 例えば、クレジットカード会社との提携により、ポイント交換用の冊子やHPに、社会的起業家への寄付についても掲載してもらう。また、電子マネー会社との提携により、溜まったポイントを社会的起業家に寄付することを約束している利用者に、「プレミアムTポイントカード」のようなものを付与して、使う度に社会貢献活動を応援する「良い人」であることが分かるような仕組みを導入する。
  • なお、こうしたポイント拠出先の有力候補として、上記プラットフォーム「チャレンジ・ジャパン」や熊本被災地支援などが考えられる。


(3)遺贈等を推進する「制度の周知」と「税制優遇措置の拡充」

  • 日本の年間相続額は、約37兆円~63兆円。そのうち相続の一部を寄付してもいいと考える人は21%いるにも関わらず、実際は0.1%に留まっている。
  • その背景として、従来から、税制上の優遇措置が不十分であることが指摘されてきた。ただし、現状でも税負担なく遺贈を行う仕組みは用意されており、まずは、その内容を正しく知らしめることが重要。例えば、被相続人が「金銭」を法人(含むNPO法人)に寄付した場合、非課税であることはあまり知られておらず、こうした制度を周知することが必要である。
  • その上で、現状の仕組みでは、被相続人が「不動産・有価証券等」を法人(含むNPO法人)に寄付した場合、租税回避的な遺贈でないことを課税当局に示さなければ非課税とならず、遺贈一件ずつ国税庁長官の承認を得ることが大きな足かせとなっている。そこで、公益法人や認定NPO法人に対する「不動産・有価証券等」の遺贈も原則非課税とした上で、事後的に租税回避的な部分があれば否認する仕組みとしてはどうか。

(注)なお、遺贈の普及にあたっては、税制面のみならず、①高齢者が寄付先が分からない、②専門家も遺贈寄付実務を知らない、③良いストーリーが顕在化していないといった課題も指摘されている。こうした課題を乗り越えるため、全国的マッチングと啓発の仕組みとして、「全国レガシーギフト(遺贈寄付)推進協議会」が本年10月に発足予定となっている。

  • また、生前贈与も、遺贈同様に促進すべきであり、個人が法人(含むNPO法人)に寄付した場合に非課税である旨の制度の周知徹底や、税制優遇措置の拡充等が必要である。

2.若者の新しい働き方・学び直しの推進

(1)兼業促進・「所得保証付きサバティカル」の導入

  • 労働市場が流動的でなく年功序列が残る我が国の企業風土にあっては、一度組織で働き始めると、何かアクションを起こしたくとも、転職や創業などの新たな挑戦に伴うリスクが高い。そのため、職場を離れるリスクを抑えながら、新たなチャレンジを後押しするための仕組みを導入する。
  • 組織の中に籍を置きつつ新たな挑戦を促進する仕組みとして、兼業促進や「所得保証付きサバティカル休暇」の導入を行う。具体的には、兼業規制を緩和した企業や、入社5~10年程度の中堅社員に1年程度所得保証付きの休職を認める企業に対し、訓練費助成金拡充等のインセンティブを付与する。
  • 上記のような取組みの普及に先駆けて、まずは、国家公務員から兼業促進・「所得保証付きサバティカル」の導入を進めてはどうか。その結果、週末を利用して起業を行う経産官僚や、1年間僻地の町役場で活躍してそのまま町長になる財務官僚が出てきて、経済活性化・地方創生にもつながるのではないか。


(2)業界別学び直しの推進

  • 魅力ある仕事に就きたいがスキルのない若者と、人手不足に苦しむ業界のミスマッチを解消することで、若者の自己実現と生産性の高い産業への労働移動を実現する。
  • 例えば、プログラミングやシステムエンジニア等の業界では、スキルのある働き手不足の一方、個社単位では教育訓練を行いきれないのが現状。こうした業界については、業界各社から出資を募り共同で職業訓練を行うことを前提に、そのプログラムを政府が認定し、一定の財政的支援や上述の寄付税制の対象とするなどを行い、プログラムの修了生については、優先的に出資社へ就職させる仕組みを導入してはどうか。

 (注)経済産業省への聞き取りでは、同様の仕組みは存在しないとのこと。近い仕組みとして、情報サービス産業協会が、ITの自社研修ができない中小企業等を念頭に、各社の人材をITエンジニアに育てる研修を実施している。


(3)大学のカリキュラム内で起業の単位認定促進

  • 学生の起業については、失敗してもリスクが少ないことや、起業を通じて学べることは極めて大きいため、積極的に支援していくべきである。
  • 既に、インターンシップについては単位認定を行っている大学も多いが、今後はカリキュラム内で起業を単位認定することも促進していく。また、学生向けの創業支援補助金の拡充し、そうした取組を後押しする。

(注)なお、大学生のインターンについては、東京の大学生が地方の中堅企業でインターンする仕組みあれば、大学生にとっても学ぶものが大きく、また地方経済の活性化にもつながるとの意見があった。


(4)給付型奨学金の創設

  • 給付型奨学金は、低所得世帯の学生が増加する中、学業に専念できる環境をつくり、卒業後の返済負担を軽減するため重要である。既に行われている政府部内の検討を加速化すべきである。

(注)なお、学生にとっては、実社会で働いてみることが何よりの勉強であり、学生が自分で働いて稼いだ分に応じて、奨学金の給付額が増えるような「自助努力型」の奨学金制度も必要ではないかとの意見があった。

3.若者の新しい生活スタイル

(1)休日分散化の推進

  • 若者の可処分所得が低下する一方、休日が集中する我が国では休日旅行・生活の費用が高止まりしている。若者が安価で快適に観光資源を楽しみ休日を使った自己実現につなげるためにも、休日分散化を推進すべきではないか。
  • 休日分散化は、これまでも幾度となく提案された経緯があるが、ITの普及などでオフィスにいなくても業務に即応できる選択肢が広がった今、実現可能性が高まっている。
  • また、休日分散化が実現すれば、これまで混雑を嫌気して海外に周っていた旅行者の国内回帰や、国内旅行の質向上に伴う需要そのものの拡大等を通じて、地方経済の底上げにも大きな効果が見込まれる。
  • 具体的には、既に欧米で行われている大型連休の地域別取得や、国家公務員の後ろ倒しGWの導入などを検討してはどうか。


(2)「不妊治療の抜本的拡充」と「妊活休暇の普及促進」

  • 初婚年齢の高齢化に伴い、不妊に悩む若い夫婦が増加をしている。若者の願いをかなえ、少子化対策としても有効な不妊治療を抜本的に拡充することが重要。
  • 現状、対外受精等の不妊治療については、妻の年齢が43歳未満の場合、1回15万円を限度に助成する仕組みがある。(所得制限:730万円、通算助成回数:6回)
  • しかしながら、こうした治療は、1回あたり30万円程度の経費がかかるため、助成制度があっても自己負担額は10数万円となり、利用者にとって大きな負担となっている。こうした現状を踏まえて、助成制度を抜本的に拡充し、治療費用の9割を補助する仕組みと出来ないか。また、所得制限や通算助成回数についても、より使いやすい形で制度改正できないか。

(注)現状の助成制度は、約150億円(国費ベース)の予算規模となっている。

  • また、実際に不妊治療をされている方の声として、病院通院や体調管理の理由から、平日に会社を休みたいが、言い出せずに治療に専念できないという課題が指摘されている。政府としても、経済界等に積極的に働きかけることで、不妊治療の通院等を目的に取得できる「妊活休暇」の普及を進め、不妊治療が行いやすい環境整備を進めるべきではないか。

(以 上)