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2021.08.05

人に優しい資本主義⑥:「社会保障制度の再分配機能の適正化」

少し間が空いてしまいました。新しい資本主義について、前回(第5回)までに、①何故今新しい資本主義を考えないといけないのか②具体策について民(Private)における分配として、企業経営のあり方やサプライチェーンにおける適切な分配などについて書かせていただいてきました。

 

今回からは、数回にわたっては公(Public)による分配のあり方について、書かせていただきます。先ず、この第6回では、再分配政策の要である社会保障政策について、①年齢による受益・負担から能力による受益・負担への転換、②制度の縦割りの是正、の二つの観点から報告します。

 

ご案内のとおり、我が国の社会保障制度は、医療であれ年金であれ介護であれ、基本的に若い世代が高齢世代を支える構造になっています。この場合の「支える」は社会保険料支出などの負担面のみならず、年金給付や医療給付などの支出面・需給面の両方を含みます。例えば、若い世代は、多くの場合医療資源をあまり使わない一方で、高齢者への医療支出のかなりの部分を支えているということです。この結果、若い世代は、年金、医療、介護に対し収入の3割近くを保険料として支払い、更に税金を支払うという厳しい状況にあるわけです。

もちろん、若い世代もいずれ歳を取ってくるわけですから、若い世代が高齢者を支えるという基本設計は変える必要はありません。しかし、少子高齢化が進む中で、将来の若い世代はますます厳しい局面に置かれていきますから、社会保障制度の再分配機能を適切に発揮させるためには、「年齢」による受益・負担の中に、「能力」による受益・負担の側面を適切に取り込んでいく必要があります。

 

第二に、我が国の社会保障制度は、制度が縦割りで細切れになっています。年金や医療では、サラリーマン、自営業者、パートタイマー、フリーランス、専業主婦、更には大企業、中小企業といった違いによって、加入すべきや保険や制度が変わってきます。こうした制度の縦割りを是正して、公平な分配を実施していくことが不可欠です。例えば、パートタイマーであっても厚生年金保険に加入できるよう制度の改正が行われてきていますが、更に、厚生年金と国民年金の財政統合のあり方などについて検討していく必要があります。

 

以上、今回は、社会保障制度の中での再分配について考えてきましたが、次回は、社会保障制度以外、特に教育費や住宅費について考えてみたいと思います。

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